ネットワーク科学概観(走り書き)

今日,私の専門分野であるネットワーク科学について少し考える機会があり,先程ようやくまとまったので文章にしておく.

ネットワーク科学は,その名の示す通り「ネットワーク」という対象について科学する分野である.ここで言う「ネットワーク」とは,インターネットやWWWといった情報ネットワークのみを指す言葉ではなく,事物や人間の関係性を表す系一般を指す.グラフ理論の言葉で言えば,ネットワークとは事物や人間を表すノード(頂点,節点,点)とそれらの関係性を表すリンク(エッジ,辺)で構成されるシステムということになる.実世界に存在するネットワークの例をぱっと思いつく限り列挙すると,

・物理学:スピンネットワーク,回路図

・化学:分子間相互作用,結晶格子

・生物学・生態学:細菌間相互作用,食物網,神経網,粘菌ネットワーク

情報工学:インターネット,WWW,共起表現のネットワーク

社会学:友人関係の社会ネットワーク,性的接触のネットワーク

・経済学:企業間取引ネットワーク,貿易ネットワーク

などが挙げられる.上記例を見て分かるように,ネットワークとして捉えられるシステムは実世界に遍く存在していると言える.

 

さて,分野の説明をいつまでもだらだらしていると本題に移れない気がするので,説明はここまでとして本題に入る.

ネットワーク科学ではこれまで膨大な数の研究が為されてきたが,それらは全て「ネットワークの構造的特性」に関する研究か「ネットワーク(上)の動的特性」に関する研究のいずれかに大別される(はずである).

「ネットワークの構造的特性」というのは,言い換えれば「ネットワークがどんな形をしているのか」ということである.実世界に存在する多くのネットワークに共通して成立する大域的な構造特性として有名なのは「スケールフリー性」である.スケールフリー性とは,ネットワークを構成するノードの次数(ノードに接続されるリンクの数)の分布が冪乗則 p(k) \propto k^{-\gamma}に従うという性質である.この性質は「富めるものはますます富む」という残酷な自然界の真実を我々に突きつけた忌むべき性質である(冗談です).

また,局所的な構造特性を調べるためにしばしば用いられるのはノード中心性である.ノード中心性としては,次数中心性,媒介中心性,近接中心性,固有ベクトル中心性,Page Rankなどがあって混乱するが,結局はどの中心性指標もネットワークにおいて中心的なノードを決定するためのもので,ただそれぞれが違った評価尺度で中心性を決めているだけである(友達が多い人が中心 vs. 皆を繋ぐ架け橋的存在が中心 vs. ... というように).

次に,「ネットワークの動的特性」であるが,こちらは構造的特性と異なり「時間」を考慮した話になる.このとき変化の対象として,ネットワークの上で何かが時間的に変化(ないし運動)をする場合とネットワークの構造そのものが時間的に変化する場合の2つが考えられる.

まず,前者の典型例として挙げられるのがネットワーク上のランダムウォークである.格子点上の単純ランダムウォークを勉強したことのある人間であれば直ちに類推可能だと思うが,一応説明しておくと,ネットワーク上のランダムウォークは,ある時刻 tにあるノード i上にいるウォーカーがその隣接ノードに確率で遷移するというものである.ネットワーク上のランダムウォークはその単純さと応用可能性の広さからこれまでかなり研究されてきており,理論的にもほぼ整備されている.また,ネットワーク上の拡散も,ネットワーク上でのリソース伝播や情報伝播を記述するモデルとして,あるいは反応拡散系の研究において重要であり,良く研究されている.その他にも,ネットワーク上の同期現象の解析は20年くらい前から(?)現在に至るまで盛んに研究されている."蔵本モデル"と言えば分かる人には分かるでしょう.

後者の例としては,進化ネットワーク (Evolving network) とテンポラルネットワーク (Temporal network) の2つがある.進化ネットワークとは,何らかの規則に従ってノード及びリンクの追加・削除が発生することで時間とともに構造が進化(変化)するネットワークであり,主にゲーム理論の文脈で研究されている(気がする).テンポラルネットワークも進化ネットワークと同様,その構造が時間的に変化するネットワークであるが,こちらは微妙にニュアンスが異なる気がする(人によっては一緒くたにしてしまう場合もあるようだけど).個人的には,テンポラルネットワークの本質は前提としてstaticなネットワークが背後にあって,そこで時間に応じてリンクの顕在/潜在が決定されるというイメージが強い.ともあれ,これら構造が時変のネットワークの研究はまだまだ発展途上という感は否めない.

 

大体こんなところだろうか.すごくねむい.